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特捜部Q―自撮りする女たち― ユッシ エーズラ・オールスン (著) 

コペンハーゲン警察で未解決事件を専門に取り扱う、特捜部Q。その責任者のカール・マークに元上司(元殺人捜査の課長)から連絡が入った。最近発生した老女の殺人事件と、過去に起きた女性教師殺人事件が酷似していると言う。

一方、アネ=リーネ・スヴェンソン(通称:アネリ)は、社会福祉事務所でソーシャルワーカーとして、失業者を担当していた。ある日、医者にがんを宣告され、心の中で何かがはじけた。

カールのアシスタントのローセ・クヌスンは、メンタルの病気が悪化し、入院してしまう。


Amazonの『特捜部Q―自撮りする女たち―』のページ

とんでもない女たち。そのタガの外れた決断と行動は、正気じゃない。恐ろしいのだが、ある種の清々しさのような。そして、笑ってしまうような。
それでも読んでいるときには、女たちの視点で描かれている部分は、女たちの気持ちに寄り添ってうまくいくようにと思っちゃう。とんでもない女たちがとんでもないことをしようとしているのに。

ローセの状況は深刻で痛ましい。自殺まで図ってしまう。そんな中でさらにとんでもない状況に。
準主役級のローサがいなくなってしまうということはないはず、という大人判断ができるからこそ、読み進められたというもの。さあ、どうローセを救ってくれるのかな、お手並み拝見だ、という気持ちで。

最近で一番の面白さだった。

また、デンマークの社会福祉というものを垣間見られてちょっと物知りになった気分。妊娠していて失業していれば、お金がもらえるとか。それで、過去に複数回妊娠して、生んだ子供は里子に出してしまうなんていうとんでもない独身女性が出てくる。

ドイツ語からの重訳ということ。
翻訳:吉田 奈保子
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

制裁 著者:アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム 翻訳:ヘレンハルメ 美穂

少女を残忍な方法で暴行・強姦し、殺した罪により、ベルント・ルンドは服役中だったが、護送中に脱走した。保育園の前で、中をうかがい新たなターゲットを探していた。


Amazonの『制裁』のページ

予断を持たずにただ読み進めた。途中で思ったのは、なぜか刑務所の中の様子も描かれているが、ベルント・ルンドが少女を狙い、警察が阻止すべく立ち回る話かとうっすら考えた。しかし、それは肩すかしを食らった。

日本語の題「制裁」はよく考えられている。原題 "Ojjuret" (怪物、野獣:「訳者あとがき」から)と同様に。ルンドの心理描写から、狂気に満ちた人物であり、まさにOjjuret。また、そんな彼や性犯罪者に制裁を望む心にはOjjuretが宿っている。

刑務所の囚人の中で、子どもへの性犯罪者は攻撃の対象になるという。ジェフリー・アーチャー (イギリス) の獄中記でもそのような記述があった。向こう(ヨーロッパの方)の犯罪者には共通の感情なんだろうか。日本の刑務所でそういう話って聞かない(日本人の獄中記を2つ読んだけど、そんな話は出てこなかったし)。

グレーンス警部シリーズ第1作ということになる。しかし、そう言われなければただの脇役だ。びっくりするほど何もしない。事件解明のための名推理とかない。オフィスで常に昔のポップス、シーヴ・マルムクヴィストの歌を大音量で掛けている変人。第2作の『ボックス21』でもそうだった。こうなると、今後どんな活躍があるのか、あるいは、どんな魅力があるのかが気に掛かってくる。

ランダムハウス講談社版が絶版になった後、改稿を反映して復刊したものとのこと。
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 | TAGS:

ボックス21 著者:アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム 翻訳:ヘレンハルメ 美穂

リディア・グラヤウスカス。バルト海に面したリトアニアのクライペダで育った。スウェーデンは海を隔てた向こう側にあった。だまされてストックホルムに連れてこられ、監禁され、暴行を受けながら、売春婦として3年間1日12人の客を取らされ続けた。リディアを監禁し、売春を斡旋していたディミトリから、いつも以上のひどい暴行を受け、意識不明の状態でストックホルム南病院に運び込まれた。

そのストックホルム南病院で殺人事件が起きた。ストックホルム市警のエーヴェルト・グレーンス警部は、警部補のスヴェン・スンドクヴィストとともに捜査のため、同病院に赴き、目撃証言を得た。証言から、今までに数々の暴行や殺人事件を起こして、最近刑務所から出所したばかりのヨッフム・ラングの犯行と思われた。

一方、リディアは意識を取り戻して間もなく、人質を取り立てこもった。グレーンス警部は行き掛かり上、この事件を担当することになった。


Amazonの『ボックス21』のページ

扱いづらい人物だが、名捜査官として知られるグレーンス警部が重大な服務規律違反を犯す。いや、それ以上の罪だろうか。証拠隠滅なんだから。
リディアが命を賭して行ったことが、無に帰される。こんなやるせない話があるか。

グレーンスは、証言を得るために、非情にもどぎつい手段を使うくせに、情が絡むとあんな行動。もっともグレーンスの手段を選ばない行動の裏には、個人的な事情があると考えると一貫して情に繰られて行動しているということになる。
読者はグレーンスに嫌悪感を抱くだろう。あるいは人間とはそういうものと諦観を抱くのか。
どちらにしても読後感は良くないはずだが、移り変わりながら常に興味を引かれる対象を提示される。
リディアと人質はどうなるのか。
リディアの計画と実行の巧みさ。
通訳のベングトはなぜリディアに指名されたのか。
スヴェンはどこまで真実を暴けるのか。
そして匂わされる黒幕の存在。
それで最後まで引っ張られ、やっぱりね、と満足させられ終わる。

余談1
グレーンス警部シリーズ第2作。今、第1作である「制裁」を読んでいると、グレーンス警部ら警察側の人間だけでなく、同じ登場人物が出てくる。ヨッフム・ラングとヒルディング・オルデウス。ともにアスプソース刑務所の囚人として。

余談2
ストックホルム南病院というのは、性犯罪被害者の診療やカウンセリングを行う病院。ということで、リディアはここに搬送されたということなのだろう。
参照:ストックホルム南総合病院 - Wikipedia
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熊と踊れ  著者:アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ 翻訳:ヘレンハルメ 美穂、羽根 由

3人兄弟の長男レオは、家族の絆と暴力による支配を信じる父親に育てられた。
長じて、軍の武器庫から銃を盗み出し、その銃を使って銀行強盗をすることを計画する。二人の弟と幼なじみで兵役経験のあるヤスペルとともに。

 
Amazonの『熊と踊れ』のページ

実話をもとにしたという小説。作者の一人、トゥンベリは、実行犯たちの弟だという。そして、ルースルンドは、作中の事件のモデルとなっているストックホルム中央駅のロッカーでの爆弾事件をテレビの記者として現場から報道していたという。

レオの視点を中心として語られる。無垢な少年が受け入れるしかない何やら疑問点の多い環境。そして、青年になったレオが兄弟、幼馴染と犯罪を実行していく。
そんな内容は読んでいて気持ちが良いものではない。評判の高さから読んでみたものの、途中までげんなりしていた。長いし(560ページ超x2)、読むのをやめちゃおうかと。
でも、レオの緻密な計画がうまくいくのか気になる。人を傷付けてしまうのではないかと恐れる弟たちをかばいたくなるような気持ちが生まれる。

最初の銀行強盗時に、テレビカメラ越しにレオが末の弟ヴィンセントに見せた仕草をストックホルム市警のヨン・ブロンクスが読み解く。その記述、レオの仕草に心奪われた。

レオの仕草に心奪われてからは、兄弟の側に立って読んだ。レオのカリスマ性も弟二人の人としてまともな感性も、応援したい気持ちにさせられる。アンネリーのレオの恋人として心配しつつも計画を支えたいという気持ちもいじらしい。幼馴染のヤスペルの衝動的行動から窮地に陥るのではないか。兄弟が関わりを絶っている父親が感づくのではないか、感づいたらどうなるんだ。そんな心配をしながら読んだ。

最後はあっけなかったが、訳者あとがきによると、モデルとなった三兄弟はそれぞれの服役期間を終えて名前を変えて堅実な生活を送っているという。よかったね。
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永遠に残るは(上): ―クリフトン年代記 第7部― ジェフリー・アーチャー

終局への第7部。
ハリー・クリフトンは、ベストセラー作家となり、人権活動家としての功績を讃えられ、エリザベス女王から叙勲を受ける。妻のエマは、バリントン海運の吸収合併の申し出を受け、会長の座を降りることになるが、新たな大きな活躍の場を得る。

 
Amazonの『永遠に残るは(上): ―クリフトン年代記 第7部―』のページ

ネタばれあり。
This Was a Man
という英語の原題から、主人公のハリーが最後に死ぬんだなと想像される。日本語版の題も、そこそこ死を示唆している。

そのつもりで読んだせいか、今までの6部より、ハラハラドキドキはない。
主人公が死ぬという一大イベントに比べると、あとのことはたいしたことがないように感じられてしまう。
下巻の半ばで前立腺に小さなしこりがあると読んで、最初は手術で簡単に除去できるのだろうと思ったが、残りのページ数を考えるとこれで死ぬんだろうと見当がつく。
しかし、その前にエマが…とは。

ハラハラドキドキがまるでなかったわけではない。ハリーの親友にして、エマの兄であるジャイルズの妻(東ドイツとの二重スパイ)が東ドイツのスパイから排除されそうになるとか。ハリーの息子、セブの銀行が破産の危機に瀕するとか。ハリーの孫、ジェシカが不行状から美大を退学されそうになるとか。(画家のキャリアに美大を卒業することがそんなに大切とは思えないから、別にいいじゃんと思うのだが、叔母の大学教授の力で退学処分が取り消される。これは見事と思えないでもないが、むしろ権力のある人間が身内のために力を行使することには、権力を持たない人間から見るといやあな感じがする)
また、ジャイルズの元妻、ヴァージニアに関する章がいくつかあるけど。う~ん、どうでもいい。

最後の1章は、ハリーの葬式。
セント・ポール大聖堂でクライマックスのジャイルズの頌徳の辞の前に『エルサレム』が大聖堂を埋め尽くした会衆によって歌われる。ジャイルズの頌徳の辞はクリフトン年代記のハリーの章(1920年~1992年)をおさらい。英語のタイトル「This Was a Man」で終わる。
セント・ポール大聖堂、『エルサレム』、ジャイルズの名スピーチと荘厳な雰囲気をたたえて終結。

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ファイアーウォール ヘニング・マンケル

ITコンサルタントのティネス・ファルクは、夜、ATMで明細書を出した後、突然死んだ。
同じ頃、19歳と14歳の少女がタクシー運転手をナイフとハンマーで襲った。二人は罪を認めていた。だが、19歳の少女、ソニャ・フークベリは、拘留されていたイースタ署から逃亡してしまう。その夜、スコーネで広域に停電が起きた。重大な問題が原因となっていた。
イースタ署の犯罪捜査官、クルト・ヴァランダーは、14歳のほうの少女の取調中に少女に手を上げ、それが大きな問題になってしまう。

 
Amazonの『ファイアーウォール 上』のページ

ネットワークに接続しさえすれば、地球上のどこにいても世界の中心になるという時代の始まり。普通の人々が普通のパソコンからインターネットに接続できるという環境が整って来ていた。そんな時代を捉えている。
そして、本作では、従来の政治や金融の物理的中心地とは離れた、スウェーデンの首都であるストックホルムからさえも離れた、人口数万の小さなイースタのような町でも中心になることが可能だと示唆している。
殺人事件の陰にサイバーテロ。殺人は昔ながらの物理的な暴力手段だが、それがどうしたら、サイバー犯罪につながると想像できるだろう。この意外な展開が面白さの一つ。

この時代は、パソコンを使って利便性や楽しみを享受しようという人間がいた一方で、パソコンの操作に苦手意識を持ち自分には関係ないと考えるか、仕事で使わなければならず四苦八苦する人間がいた。
ヴァランダーは後者で、捜査に必要なコンピューターを使った検索作業等は若手のマーティンソンやフーグルンドに任せている。イースタ署の捜査主任として、捜査陣をまとめあげ、捜査方針を決め、各捜査員に作業を割り振りできれば、コンピューターを使えなくても問題はなさそうである。

しかし、直感行動型、必要な手続きをしばしば無視というやり方は、若手で野心のある捜査員には時代遅れに映ったようだ。最後の方で同僚がヴァランダーを捜査主任から追い落とそうと耕作していることをヴァランダーは知ることになる。猿の群れで若い猿がボスザルにチャレンジしているように思えた。

1997年10月3日~10月20日に事件が展開。事件が終結してからのエピローグとして、そのあとの11月も。イースタはもう寒いんだよねーと思いながら、読んだが、今シーズンの東京に関しては、あんまり変わんない日も結構あった。
ystad
また、日没は意外にも東京より遅いけど日の出はずいぶん遅い(まだ、夏時間だしね)。ヴァランダーらが7時過ぎに出勤しているのは、まだ薄暗いうちだったのだとわかる。
こんな風に地理的に遠く離れた場所の小さな町の天気もわかってしまうというところが、インターネット時代のいいところ。
作者は後記で

自分の都合で、スコーネに霧の降る晩を作り出している。

と言っている。
作中に深い霧であたりが見えなくなるほどになるというシーンが出てきて、それが幻想的ですてきに思えたのに現実にはないんだと思ってがっかりしたが、やっぱり霧が出ることがあって、作中のシーンのような景色ももしかしたら出現するのかもしれない。

これで現在日本語に翻訳されているヴァランダー・シリーズは終わり。あとはスピンオフ、ヴァランダーの娘、リンダが活躍するという話か、英語版のヴァランダー・シリーズか。英語版になっていない(たぶん、オランダ語とスウェーデン語版のみ)というヴァランダー・シリーズ作品も。
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背後の足音 ヘニング・マンケル

夏至前夜(ミッドサマー・イブ)に自然保護区の公園内で18世紀の服装でひそかにパーティーをしていた若者3人が殺された。しかし、家族には、ヨーロッパに行くと絵はがきが届いた。
2通目の絵はがきを受け取ったその母親の一人が、警察にその絵はがきは娘が書いたものではないと訴え、捜査を求めてきた。
そんな中、イースタ署の犯罪捜査官であるスヴェードベリが射殺された。
イースタ署の犯罪捜査官である、クルト・ヴァランダーは、スヴェードベリの調査が殺される前に取得していた夏休みの間、当時、殺されていることも明らかになっていなかった若者たちについて同僚にも告げずに捜査していたことがわかった。

 
Amazonの『背後の足音 上』のページ

ヴァランダーにとって、仕事上の付き合いだと考えていたスヴェードベリが、生前ヴァランダーを親友と考えたいたことを死後になって知る。
このやるせなさ。ヴァランダーは、感傷に浸る間もなく精力的に捜査を続けるのだが、それはずっと心に残っている。

たしかなことが一つある、とヴァランダーは心でつぶやいた。
スヴェードベリが死んでからまだ一日ほどしか経っていない。が、われわれは生きていたときより彼についてずっと多くのことを知るに至っている。



捜査の手が足りず、ハンソンにハンソンかフーグルンドのどちらかに来てほしいと言うシーン。ハンソンにどちらに来てほしいか問われて、フーグルンドに来てほしいのにどちらでもいいと答える。
それで来たのはフーグルンド。

ハンソンはヴァランダーが本当はどっちに来てほしいかわかったのかもしれない。



ヴァランダーや登場人物の感性や考え方は身近に感じられた。

とは言え、ヴァランダーは、糖尿病なのに隠す。ニーベリも巻き込んで違法行為と知りながら、被疑者の家の鍵を破って捜索する。射撃の名手の犯人が乗っているかもしれないボートへの乗り込みを同行のマーティンソンを騙してまで単独で行ってしまうなど、相変わらずの無茶は理解できないが。

そして最大の無茶は、犯人から撃たれ銃弾が頬をかすめたというのに逃げずに捕まえようとするところ。
ピストルも携帯電話も警察署の自室の机の上に置いてきてしまったという状況で。
逃げないなんて馬鹿じゃんとも思ったけど、それが警察官魂ってもんかもね、ここは。

我らがエッバが、その親切心から大ピンチというのはヴァランダーの危機以上にはらはらした。ヴァランダーは主人公だからたぶん死なない。でもスヴェードベリも殺されたんだからエバが殺される可能性もあると考えられたから。

ヴァランダー自身が殺人者に狙われるというのはシリーズで頻繁に使われすぎだと思う。狙われる理由も説得力がない。クライムノベルでは、それがお約束だからしかたないのかな。

だけど、インタビューするのに筆記用具を忘れていたり、話の要点を書いたメモが毎度どこかにいっちゃったり、携帯など重要なものを忘れちゃったりするのは、不自然とも馬鹿とも思わない。自分がそうだからね。
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

閉じられた棺 ソフィー・ハナ

ソフィー・ハナによる、エルキュール・ポアロ第2作。

スコットランドの刑事、キャッチプールは、アイルランドの児童向け推理小説作家、レディ・アセリンダ・プレイフォードの屋敷に招かれた。そこには友人のポアロも招かれていた。
着いたその日のディナーの席で、レディ・プレイフォードは、破天荒な遺産相続内容の更新を告げる。
その晩、新たな相続人となった者が殺された。


Amazonの『閉じられた棺』のページ

読み始めはいただけなかった。
例によって、読みにくい文体。(推定される理由はあえて語らない)
難病で余命が幾ばくもないという人物にひどい物言いの人々。
屋敷の主もなんだかあえてトンチンカンな人物になっているようで、面倒くさい。

それが読んでいると、面白くなってくる。
当初考えられていた死因が実は違っていたり。
検死審問後に、驚くべき事実が浮き上がったり。
それで、被害者に対する意識が自分の中でがらりと変わるのも面白い。

これを読み始めた頃か、読み始めるちょっと前かに、イギリスは謎解きの本格ミステリーがお家芸というような記述を読んだ。ほんと、そうだね。

レディ・プレイフォードがある人物を愛しながらも、殺されるかもしれないという心理。私にはわからないなんて思っていたけど、よく考えたら、そんなことなかった。
昨日の仕事で某グローバルエンタメ施設企業のおもてなしに関するちょっといい話が出て来て知らずに涙ぐんでいた。でも、実は最初に読んだ時は私がそのようなもてなしを受けるのは嫌かも、やられてむしろ悲しい気持ちにならなかっただろうかと思ったんだよね。
人間、歳とともに感情と理性が同時に別々に働くんだね、とレディ・プレイフォードにシンパシー。

そして、奔放なようでいて義理堅いレディと、彼女に忠信を尽くす存在もいいなあと思った。
チャッチプール君の控え目な性格といい、これはイギリスないしはUKの味じゃなかろうか。好きな味だ。

舞台のクロナキルティはここのようだ。
そもそも、ポアロとキャッチプールはロンドンから来ているわけだし、もう一つの舞台であるオックスフォードもイングランドであり、イギリスであり別の国になるのだが、そういう垣根が一切なく描かれている。
東京の人間にとっての松山ぐらいの感じなんですかね。距離だとそんな感じ。

最初っから文庫って助かる~。軟弱すぎるけど、単行本じゃ重くてつらいのよね。

THEME:ミステリ | GENRE:小説・文学 |

五番目の女 ヘニング・マンケル

鳥を愛する隠居した男、ホルゲ・エリクソンが殺された。次に蘭の愛好家、ユスタ・ルーンフェルトが誘拐される。
イースタ署の警部、クルト・ヴァランダーらが捜査にあたる。

 
Amazonの『五番目の女 上』のページ

まず、書いておかないと忘れるので、本作の核と思えるものについて。
女性への虐待と自警団。
スウェーデンでは、実際この頃(90年代)に自警団が社会問題になっていたという。この場合の自警団とは日本人が想像するものとは異なり、警戒にあたるだけではなく、自ら処刑(私刑)を実施してしまうというもの。
この二つが掛けられて本作の骨子を形成している。

鳥を愛し、鳥の詩のみを書く男と、蘭を愛好し、アフリカまで旅行するという男。殺人などの対象となりそうもない人物が…というのが、引き込まれていった要素の一つでもあるかな。
また、読みだせば程なくわかることなのでばらしてしまうと、犯人は女性。
これは、もう一つの引き込まれた要素。自分が女だから、親しみやすい気がする。
ただし、この犯人の考えることはほとんど理解できなかったけど。

女性といえば、シリーズが進むにつれ、女性の活躍率が高まりつつあるかな。これはシリーズ第6作。
フーグルンドは、今や片腕。
前作の途中だったか、イースタ警察署の署長の女性になったし。リーサ・ホルゲソン。
娘のリンダもちょくちょく登場。
その中でも、地道にいいなあと思うのは、受付のエッバ。
父親と行ったローマ旅行で必死に日焼けしてきたヴァランダーに対し、
「九月でもイタリアならそんなに日に焼けることができるのね?」
なんて、ヴァランダーが一番言ってほしいことを言ってあげる。すごいよ。

その父親。ヴァランダーとは長いことわだかまりがあって、ローマ旅行で打ち解けあえたと思ったのに…ね。

ヴァランダーは、バイバ・リエパを呼び寄せて、一軒家に住んで、黒ラブを飼うなんて夢を描いている。
娘のリンダに、他人と住むには不向きと言われても、そう願い続けている。
さて、どうなるんだろう。

最後に、
本作が良かったと思う点は、チームワーク機能が高まっているところ。ヴァランダーがイースタ署の刑事の特徴や役割から、適切な仕事を振る。ストックホルム等の警察署からの応援の刑事、近隣の警察署の刑事と協力して、効率よく捜査を進める。
それで、それぞれの刑事の仕事や気付きから、難解な事件が解決につながるというのは、ヴァランダーがひとりで事件を解決するというより、現実味がある。

THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |

目くらましの道 ヘニング・マンケル

夏の休暇が間近い6月21日下旬にイースタ警察署の警部、クルト・ヴァランダーは、農夫からの通報を受けて菜の花畑に居座っているという不審な女を見に行った。ヴァランダーが見たところ女はまだ少女であった。その少女は、ヴァランダーの目の前で焼身自殺をした。
翌22日に元法務大臣が殺されているのが発覚し、その死体から頭皮が剥ぎ取られていた。
犯人は、自分を伝説の人物、ジェロニモともフーヴァーとも同一視し、殺人を自分が行うべき復讐と考え次の犯行にかかろうとしていた。

 
Amazonの『目くらましの道 上』のページ

1994年6月21日から7月8日までの物語。夏至祭を挟んだ、スウェーデンの最も素晴らしい季節に猟奇的でさえある殺人事件。それも連続殺人。
ヴァランダーの心理描写にこの季節感がさりげなく織り込まれる。
ちょうど今の季節。入っていけます。

ヴァランダーがアパートの地下のランドリー室を予約して、洗濯をする
夏至の前日の夜通しのパーティー
菓子パンをふるまう所長代理
事件に追われる
こういった事件捜査以外のスウェーデンを知れるところも大きな魅力。

ヴァランダーは、『『笑う男』の事件解決以来、(『リガの犬たち』で知り合った)バイバ・リエバと遠恋を続けてきたらしい。それで、今回、7月にこちらで落ち合って、ヴァランダーが鬱症状で休職中に何度か過ごしていたデンマークのスカーゲン(『笑う男』)で休暇を過ごすという設定。
連続殺人事件となって、ヴァランダーは朝から晩までまるで時間がなくなり、バイバの留守電のメッセージにも、留守中に署にかかってコールバックするようにという伝言も無視。というか、事件の解決の目処も立たないまま、伝える言葉を見つけられず、電話をかけることができない。
人として男として、ダメダメだよねえ。

肝心の内容は、英国推理作家協会の文学賞、ゴールド・ダガー賞受賞というだけあり、よどみなく読める。上下巻2冊になったけど、長さは感じなかった。
ネタバレになるけど、本編のテーマは少女買春組織。冒頭、誕生から8ヶ月で洗礼を受けたドロレス・マリア・サンタナには幸せになって欲しいと思わされるのに、その後の展開は、残酷すぎる。
THEME:海外小説・翻訳本 | GENRE:小説・文学 |
プロフィール
自分的に人生で一番の読書ブーム到来。 忘れっぽいので、読んだ本のログをとることにしました。 題名だけじゃ、内容を覚えられなくて、読んだことすら忘れるほどの忘れんぼ。
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